地理情報システム、つまりGISとはGeographic Information Systemの略で、地理的位置を基点に、位置に関する空間データを総合的に管理・加工し、視覚的に表示する技術のことをいいます。このGISの導入によって土地や地歴に対する高度な分析や綿密かつ迅速な判断が可能になるのです。
私たちが開発したJHICO Mapは古地図を単にスキャニングしたものではなく、GIS技術によって正確に街区や道路、河川などの位置を割り出すことに成功しました。
古地図の代表的なものとして「江戸切り絵図」が挙げられますが、その多くは作者の主観的な立場から、一部分が誇大に描写されていたり、あるいは簡略化されており、地図として正確なものではありません。
そして明治時代になって、ようやくわが国でも緯度経度が採用された地図が登場することになります。それは、当時の内務省や陸軍省によって測量・製作された地図で、大部分は2万分の1の縮尺であり、皇居を中心としたエリアでは5千分の1~1万分の1の縮尺で展開されています。さらには国土地理院数値地図2500・街区データを「基図」として明治時代の地図を重ね合わせることからこのプロジェクトは始まりました。
下の地図は緯度経度が反映された明治時代の地図ですが、明治10年の『二万分一迅速測図原図』、明治16年の『五千分一東京図測量原図』、明治20年の『内務省地理局作成地図』を見ると、細部では微妙な誤差があることがわかります。まずは、その誤差を解消することが第一歩となりました。
縮尺は2千500分の1のものであれば相当な精度であると評価できますが、5千分の1となればその精度は2千500分の1の地図に対して4分の1となるため、微妙な地勢の判断は難しくなります。
道の生え方、角度、うねり方、道の緑に沿う水路や河川・用水などの複雑な流路、堀の暗渠などの地勢の再現は膨大な資料を参考にして推量しています。また、文字情報については陸軍地図においては道や山、川など地形について主眼が置かれているのに対し、内務省の地図は土地利用を主眼とした地名や町名、番地など強調されています。さらには郵便地図では町名や橋、坂、堀、河岸など、地名や番地が詳細に記載されてもいます。それらを統合整理しなくてはなりません。
こうしたプロセスを経て、初めて江戸時代の万延元年の古地図にアプローチすることができたのです。
Pursue All Existence JHICO
全ての存在を追求する
次に地図におけるベクターデータとラスターデータについてですが、GISのデータモデルにおけるベクターデータはポイント(点)、ライン(線)、ポリゴン(面)による3つの要素で表現されます。
JHICO Mapはこれに準拠したデータベースのため、拡大あるいは縮小しても誤差は発生しません。そのため、印刷物への対応はもちろんのこと、屋外での巨大なプロジェクションマッピングにも無理なく対応できるのです。
一方、ラスターデータとはタイル状に並んだセル(ピクセル)で構成されるデータです。空撮データや明確な境界データを持たない連続データを表現するのに適していますが、明確な境界を持つ市町村境界などを表示するのには適していません。拡大すればジャギー(いわゆるギザギザ)が発生してしまうため、地図において正確性に欠けると指摘されているためです。
しかし、JHICO Mapでは各縮尺において最大限にクリアなラスターデータを搭載しています。
そして、ベクターデータとラスターデータの相乗効果により、視覚的に負担が少なく、理解度の高い構成となっているのです。
そのほか、JHICO Mapでは地図上に露出させていない地歴や周辺情報、関連人物、風俗、音曲、絵画、写真などの情報をデータベース化しています。これは、関連する文献データや二次元データ、音源などを独自にファイリングしているためで、そうした意味でも貴重な文化的資産として構築されているものです。
History Culture, as a Source of all infomation JHICO
忘れ去られた記憶、消え去った事実を膨大な資料を基に、可能な限り忠実に再現されたデータベース構築による情報の共有と提供